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信頼される動物病院へ~顧客心理を知ってご家族の立場に立つ(2)~

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信頼される動物病院へ~顧客心理を知ってご家族の立場に立つ(2)~

『ベッツワンプレス 2013夏号(Vol.35)』 掲載分

信頼される動物病院へ~顧客心理を知ってご家族の立場に立つ(1)~
株式会社マンズ・リソース 代表取締役 星野 惠子

前号から、誰でもが利用者・患者様・顧客になったときに感じる「顧客心理」について取り上げておりますが、今回はその二回目です。顧客心理は代表的なものとして、 (1)歓迎期待の心理 (2)独占したい心理 (3)公平に扱って欲しい心理 (4)自尊の心理・恥をかきたくない心理 (5)真似をしたい心理 (6)自分本位の心理 (7)損をしたくない心理 の7つが挙げられますが、今回は(3)と(4)について、みなさんとご一緒に考えていきたいと思います。

(3) 公平に扱って欲しい心理

例えば、みなさんがファーストフードのお店で注文の順番を待っていると想像してください。窓口は複数あるけれど、特に線が引いてあるわけでもないお店の場合は、はっきりとした列の作り方が分からなくて、どこにどう並んだらいいかが分からない状況です。実はそれだけでも結構ストレスになっていませんか? なぜかというと、「ちゃんと先着順に受け付けてくれるだろうか?いや、受け付けるべき。」という考えが浮かぶからです。受付の人が「お先にお並びの方」と呼んでくれたら、それも解消されることがありますが、それまでの間はすでにストレスで、心の中では「ついてないなぁ。次は並んでないときに来よう。」と言っています。それならまだ良いのですが、無意識にそういうお店を避けるようになります。 動物病院においての公平性はどうでしょうか? 受付などで、先に述べた「先着順」を守ってもらえるだろうという安心感を与える「声のかけ方」、またストレスを感じない「システム」を作ることも公平性の一つです。急患や薬の場合は診察や会計の順番が前後することへの説明も、壁の貼り紙だけでなく、やはり一言お声をかけることは必要でしょう。患者様は自分の順番をよく分かっています。

また、同じ患者として、個性を公平に扱って欲しい、ということもあるでしょう。

こんなことはありませんか? Aちゃんという猫さんは人慣れしていなくて、病院にくる度に大暴れ。油断すると咬みつかれ、その鋭い爪で引っ掻かれそうな勢いです。もちろん、こちらに好意を示してくれることなどありません。それに比べてBちゃんという猫さんは、いつも来院の度にゴロゴロ、スリスリと懐いてくれて、診察・治療もスムーズに進みます。人情としては、やはり懐いてくれる猫さんは手がかからないですし、かわいいと思うものですよね。みなさんは、暴れるAちゃんにも笑顔で接し、忍耐強く対応されることは、きっと意識されていると思います。ただし、ここで注意が必要なのは、かわいいと思うBちゃんに接している際の様子を、Aちゃんのご家族が見ても違和感がないかどうかです。

これはご家族自身に接するときも同じです。顔なじみの方、話しやすい方とは表情や話し方も親しそうに見えているけれど、そうでない方から見ると、不公平さを感じないかどうかです。また、主張をはっきりされる方へはすぐに対応するけれど、声を出さない方への対応が後回しになっていないかどうかなど、仕事中はいつも360度見られているという意識が必要です。なかなか難しいですね。ただヒントとしては、公平性を意識するのに「順番」や「時間の長さ」など、数えられるものだけでも結構使えるということがあります。そして、人的な対応を敢えて数値化するとすれば、「言葉の数」「アイコンタクトの回数」「笑顔の回数」なども入るでしょう。人は最初に五感でものごとを感じ取り、その後に頭の中でその人の「考えや信念」として固めていきます。「誰に対しても愛情を持って、親切に同じように扱ってくれる」という考え(安心できるという印象)を持っていただくために、五感で受け取れるものの質を磨いていくことも大きなポイントです。

星野先生による、動物病院スタッフ様対象の接遇スキルアップ講座(ペピイ主催)の様子。本講座は、ご好評につき本年7月~9月に大阪にて開催予定です。

(4) 自尊の心理・恥をかきたくない心理 

ここでは「自尊」について、「自分は自分なりにできている」という、顧客心理としての狭い意味合いで使っています。プライドに近いものです。それと、「ちょっと自慢したい気持ち」も含めます。 

やはり、自分のところの子(動物さんたち)を誉めてもらうと嬉しいものですね。ご家族によっては、その子の血統に誇りを持たれている方もいらっしゃるでしょう。また、動物に関する知識を持っていることや、家での飼い方や訓練の仕方などをきちんとしていることに対してプライドを持たれている方もあるでしょう。それらについて大げさに誉める必要はないですが、そのことや協力的な姿勢に対してなど、こちらの感謝の気持ちや感想を述べることは、自尊の気持ちを大切にした話し方ともいえます。また、それらをどの場所で、どのように伝えるかは(3)の公平性を保ちながら実践することが重要になります。

「恥をかきたくない」という心理は、「自尊の心理」の裏返しです。もっと柔らかく言うと「恥ずかしい」という思いをなるべく避けられるように、ということです。先に述べた、暴れる子のご家族の気持ち、大きな声で鳴いたり吠えたりして周りに気を遣うご家族の気持ち、待合室で粗相をされ、周囲の人にも病院にも申しわけないと思っているご家族の気持ち、などなど、様々な場面が想像できます。また、例えば何かこちらから注意せざるを得ないような出来事があった場合のご家族への注意の仕方にも、配慮が必要です。

これらのそれぞれの場面でも、やはりスタッフからの素早い対処と、恥をかいたと感じさせないような声のかけ方が重要になります。基本的には、冷静で温かい物腰が必要ですが、会話としては、共感の他に、こちらのせいにしてしまうというのも一つの方法です。例えば、吠えたりする子への声かけは「お家と違って居心地悪いよね。ごめんなさいね」ご家族へは、「気がつかなくて、すみませんでした」「お声かけできずに(説明が分かりにくくて)申しわけございませんでした」などのような例ですが、みなさんなら、もっと色々な声かけの仕方を持っていらっしゃることでしょう。

今回は(3)~(4)をご一緒に考えましたが、次回も(5)以降について続けさせて頂く予定です。みなさんの職場でのアイディアも教えて頂けると嬉しいです。お元気でお過ごしください。

著者紹介

星野 惠子
星野 惠子
● 株式会社マンズ・リソース 代表取締役
● 元日本航空国際線客室乗務員 ● 元JALアカデミー接遇インストラクター
● 日本ベビーコーチング協会理事 ● KMC認定心理カウンセラー
これまで病院・医療専門学校・福祉施設・動物病院を含め、600団体以上において接遇研修・心理セミナーを担当。
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