動物病院へ対する飼い主の不満によく挙げられるのは、「待ち時間が長い」ことです。先生の病院では通常、どれくらいの待ち時間が出ているでしょうか。来た順番に受付…であれば、顧客心理としては通常、椅子に座っていても「待つ」のは5分が限度です。病院だと、15分くらいでしょうか。それ以上かかるなら、待ち時間の目処を知りたいと誰もが思うものです。
受付で「あと、どれくらいですか?」と聞かれることはありませんか?時には、待ちきれず、「もういいです」とお帰りになってしまう飼い主さんがいらっしゃいませんか?もし、そういう現象が起こったことがあるとして、その後、何か具体的な対策をたてられたでしょうか?
飼い主さんが病院の外にまであふれ、何時間も待っていらっしゃる病院もあります。それはある意味、世間に向けて、その病院の価値を表すプレゼンテーションの役割を果たします。
再三申し上げてきたとおり、獣医療について素人の飼い主に、獣医師の技術に対する判断力はありません。「患者があふれている」という現象を見て、その病院の価値を判断し、並ぶ飼い主さんもいらっしゃるでしょう。しかし、通院を頻繁に余儀なくされる状況が続くと、よほど日常生活に時間的余裕のある人を除き、「待つ」ということに対する忍耐力が、何年も継続することは難しいでしょう。その病院のファンでありながらも、「待ち時間が長いから」という理由で、その病院への通院を断念する飼い主さんが出てしまうのは大変残念なことだと思います。
来院数はその日によって異なり、受付システムを変えるのは、なかなか難しいというのが現状でしょう。「予約制」の導入は、病院側にリスクがありますね。予約時に飼い主さんが現れなければその時間に穴が空き、人件費の無駄になってしまいますから。また、その時間通りに診察が終了するのか、見極めがつかないという現実もあります。それにより、「予約したのに…」と一段と飼い主さんの怒りを増幅させてしまうこともあるでしょうし、獣医師の数が少なければ、予約どおり診察を進められないということもあるでしょう。
しかし、待ち時間は長いほど、飼い主さんが不快を感じてしまうというのもお分かりかと思います。30分以上待たされると、待合室には不快感情の人が複数人、常にいる状態ですから、クレームも出やすくなります。不快感情の人と対応する人は緊張感を増しますし、かなり高い接客技術を要しますので、スタッフの心理的疲労度が高くなるでしょう。また、飼い主さんは不快感情とともに診察室に入ってくることにもなります。待ち時間に比べて、診察時間を短く感じてしまい、納得感に欠けるという心理現象も引き起こしやすいでしょう。それは更に「診察費が高い」と思わせてしまうことにも繋がります。
病院にとっては、忙しいときほど、診察時間を短くしなくてはなりませんから、飼い主、獣医師、看護士…3者のストレス度が高くなってしまう悪循環ではないでしょうか。少しでも飼い主さんが「待つ」ストレスを軽減する方法を考えてみましょう。