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価値を伝える接遇的テクニック

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価値を伝える接遇的テクニック

『ベッツワンプレス 2006冬号(Vol.9)』 掲載分

『ベッツワンプレス 2012秋号(Vol.32)』
大阪ぺピイ動物看護専門学校 マナーとコミュニケーション講師 坂上 緑

精算時に飼主さんに「高いね」と言われたことはありませんか?「動物病院は高い」というのが、一般的な飼主の持つイメージの一つのようです。私は動物病院と関わりの深い仕事をしており、獣医師、看護師の皆さんの仕事の内容や、平均的な報酬もどれくらいかなどよく存じておりますので、決して個人的に「高い」とは思っておりません。動物病院の設備投資額、皆さんが、その職業に就くまでにかかったコスト、提供している技術、知識、労働時間等を鑑みると、実は業界全体ではもっと収益を上げて、労働条件に反映させていくことが非常に重要だと考えております。

それなのに、現実には「高い」と評価される現状があるのはなぜでしょう? 率直に申し上げて、私は動物病院業界全体が、自分たちの提供しているものの価値を十分に顧客に伝えきれていないからだと思っています。つまり商品に対するプレゼン意識が低いのです。顧客が「動物病院は高い」と評価することは、飼主の自分たちへの理解が不足しているという認識を持ったまま、すなわち「わかってもらえない」まま放置している…とうことに他なりません。こちらも不満を持ったまま、不満を持った顧客と付き合っているということになるからです。

しかし、製造業のように生産レベルでの企業努力ができない人的サービス提供が商品となる業界が、顧客獲得のために値段を下げるというやり方は、最も安易な方法です。価格競争が激化したため、自分達の労働条件を非常に厳しくしてしまった業界もあります。ノンスキルでは立ち行かない仕事をする人たちの労働環境を過酷にするやり方を導入してしまうと、働く人にやる気を削がせ、業界全体が有能な人材を失っていくことになってしまいます。動物を愛する一飼主として、そうならないことを願います。

ですから、動物病院の経営者に今、考えていただきたいことは、自分達の提供するものの価値を顧客に正確に伝え、満足して対価を支払っていただくにはどうすればよいか…です。スタッフの見た目をすっきりと変える…実はこれが時間的に余裕がない、コストもかけられない…そういう時に、もっとも有効な方法です。

髪が与える印象

ホテルのラウンジで提供されるコーヒーは、1杯1000円前後ですね。これを、前髪と横の髪がばらっとおちてくるような人が運んできて、顔を横に傾けながら、無造作に置いたら、どう思われますか?

このコーヒーの1000円はとても高いですよね? 喫茶店の400円前後、セルフサービスの店の250円前後のコーヒーと、ホテルのラウンジで提供されているコーヒーの値段の違いを顧客はどのように区別し、納得しているのでしょうか。

もちろん、コーヒーを提供する「人」の違いです。違いにはいろいろありますが、決定的なものが「髪」です。ホテルでコーヒーを運んでくる人達の髪は、前髪も動いていないことをお気づきでしょうか?人間は仕事中に下を向く動作が非常に多いので、当然、前髪や横の髪は下に落ちてきます。髪が動けば、それに影響される動きが必ず出てきます。首を傾ける、頭を振る、手で髪を触る…1日のうちに数え切れないほど、その「仕事と無関係な不要な動き」を繰り返しています。このように自分を世話する動きを「自己親和」行動と言いますが、清潔感に欠けるのはもちろん、仕事と関係ない動きは、「専門性に欠けて見える」という決定的なマイナスイメージを相手に与えてしまいます。仕事をしながら自分の世話をする行動を繰り返す人のすることに、顧客は満足しません。

無意識への影響

人間も動物ですから、動くものには無意識に目を惹かれてしまいます。せわしなく動く頭や手の動きに翻弄されて、その人のする説明には無意識で満足していないのです。この無意識…というのが、信頼関係に一番大きく影響します。何となく…という感覚的なものだからです。何となく手を抜かれている、何となく頼りない、何となく信用できない…そういう印象として、残ってしまうのです。話術とはまったく別に、説得力が落ちてしまいます。

テレビのホームドラマの何気ない会話のシーンを気をつけてご覧になってみてください。どの俳優も、髪のために余計な動きはしません。見ている人に会話を聞かせて、ストーリーや状況を理解させようとする時、不要な動きをさせてしまうと、本筋が伝わりにくくなるからです。アナウンサーも同様です。お辞儀をした後、頭を振ったりはしません。「髪」一つで、多くのことが大きく変わるのです。だから、同じようなコストの商品なのに、販売価格を大きく変えても顧客が納得しているという点にご注目ください。

先生の病院のスタッフのみなさんはいかがでしょうか?仕事中に自分の髪を所定の位置に納めるために、頭を振っていないか、手でお世話している人がいないかどうか、また、ご自身はどうか、観察してみてください。残念ながら、そういう動きと共に提供されるものは、技術も情報も専門性にかけて見えるのです。心理的に高いと感じるコーヒーになってしまうということです。無臭のヘアスプレー、もしくは、ワックスなどのスタイリング剤を使い、動かない髪にすることで、印象だけはでなく、その人の集中力も、疲労度も違ってきます。

ユニフォームが与える印象

ユニフォームも大きく影響します。説得力の点で言うと高い順に、長い丈の白衣、ケーシー、スクラブ でしょう。それほど年が変わらなければ、長い白衣を着た後輩の方が、スクラブを着た先輩よりもキャリアが長く見えてしまいます。学生の頃から白衣を着慣れた先生方には、意外なことかもしれませんが、素人からみると長い白衣こそ「お医者さん」のイメージそのものですから。いつも飼主の視点に立って、どのような印象が伝わるかを検証なさってください。

日常の診察時は、動きやすさを優先してユニフォームを選ばれることも多いのでしょうが、獣医師の先生がクレームの対応、重要な商談、値段交渉などをする時は、長い白衣を着て臨んでいただくとよいでしょう。特に、「若く見えすぎる」先生には大きな効果があります。ネクタイをつけるともっとよいですね。

動物看護士のユニフォームも、病院のコンセプトを鑑みて、従業員任せにせず、経営者が選びましょう。どちらかと言うと、キュートで甘い色、デザインのニフォームを選ばれている病院が多いように思いますが、クライアントエデュケーションを目的とした説明業務等を担わせるなら、クールでシャープな感じのものがよいでしょう。複数人いるなら、看護士長などの役職によって、色やデザインを変えれば本人のモチベーションも違ってくるし、新人のフォロー対応をする時、飼主さんに対して心理的に与える影響にも効果があります。

専門性を伝える視覚的な印象は、訓練または教育された知識または技術であると、相手に納得させます。信頼に値するものだと無意識にアピールする心理的効果があるのです。少しずつではありますが、コストやエネルギーがほとんどかからないものから導入していくことで、自分達が伝えるものの価値を効果的に伝えることに、意識を向けていただけたらと思います。

ホテルでは「このコーヒー高かったね」と言われることはまず、ありません。値段分の価値が商品提供と共に伝えられた時、顧客は満足して支払ってくれるようになります。

著者紹介

坂上緑
坂上 緑(さかがみ みどり)
大阪ペピイ動物看護専門学校「マナーとコミュニケーション」講師。
フリーアナウンサーとして活動しながら、国際博覧会、専門教育機関、店舗、企業で接客,セルフプレゼンテーションの研修講師を務める。大阪府箕面 市「北摂夜間救急動物病院」顧問。第25回動物臨床医学会スタッフセミナーで「飼い主さんと良い関係を築くために」のテーマで講演を実施。
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