動物医療関係者のための通販サイト 【ペピイベット】PEPPYvet(旧 ベッツワン)

カテゴリから探す

カテゴリから探す

新規会員登録特典として今なら
1,000ポイントプレゼント中!

はじめての方へ

  1. 送料無料まであと ¥5,000(税込)

  • ペピイベット
  • 獣医師としての「知識・技術」と「心」を磨くために

獣医師としての「知識・技術」と「心」を磨くために

印刷用PDFを表示

獣医師としての「知識・技術」と「心」を磨くために

『ベッツワンプレス 2012秋号(Vol.32)』掲載分

公益財団法人動物臨床医学研究所 所長 倉吉動物医療センター・山根動物病院 総院長 高島 一昭氏

多様なニーズへの対応が必要な臨床の現場において、日々研鑽が求められる獣医師。40年以上にわたって獣医師の教育、獣医療の向上に取り組み、多くの優秀な人材を排出され、昨年日本で初めて小動物臨床診療研修施設の協力型臨床研修施設として、農林水産大臣の指定を受けられた倉吉動物医療センター総院長 兼 公益財団法人動物臨床医学研究所 所長の高島一昭先生にその取り組みについて伺いました。

現場の獣医師が、明日から臨床に生かせる知識、技術の向上を目指して

公益財団法人動物臨床医学研究所では、現場の獣医師が明日から臨床に生かせる知識、技術の向上をはかるために、年次大会として日本学術会議の正式学会となる「動物臨床医学会」を、さらに月に一度「合同カンファレンス」を開催しています。

動物臨床医学会

今年で第33回目となる「動物臨床医学会」では基礎獣医学から最先端医療までの教育講演と毎回200例を数える症例検討や、動物看護師や動物病院スタッフセミナーなど、動物病院に必要なテーマを網羅しています。

合同カンファレンス

一方、40年以上の歴史を持つ「合同カンファレンス」では、年間を通じた教育セミナーや、時間制限のない発表と質疑応答による密度の濃い症例検討会を行っています。

合同カンファレンスは一昨年度(2010年度)より、大学を中心に多様な団体が連携した「知の市場」※の連携・開講機関となりました。もっとも合同カンファレンスは開業獣医師の専門的な研究会のため、獣医師と動物看護師、獣医療スタッフ、獣医科大学学生が主な受講者で、出席者には毎回レポート提出を義務付けていることもあり、これまで以上に深い学びを得られる場となっています。

また、当財団の理事長が日本獣医師会会長の山根義久でもあることから、震災被災地での動物救護活動の状況や、大学再編、動物看護師の公的資格化に向けた動きなど、最新の獣医療界におけるトピックスをテーマに講演することもあり、参加者にとっては貴重な話を聞くことができる場となっています。

※「知の市場」
大学や様々な業界団体が連携し、自己研鑽と自己実現のために立場を超えて自ら活動する場。各分野のプロ人材の育成を目指しており、社会人から学生まで開かれた学びの場。

学んだことが、すぐに現場で生かせるように

合同カンファレンスも動物臨床医学会も、当初から一貫している目的は、「現場の獣医師が明日から臨床に生かせる知識、技術の向上をはかる」ことです。そのため、症例検討の「抄録」も、他の獣医師が診断、治療に役立てられるように、治療した動物の品種から年齢、性別、体重、薬剤の投与量、回数などの基本的なデータをきちんと記載していただいています。

専門分野を有する協力病院と共に若手獣医師の教育、育成に取り組む

昨年(2011年)3月、長年続けてきた財団の教育活動を支える現場の各診療施設が、小動物臨床診療研修施設の協力型臨床研修施設として、日本で初めて農林水産大臣の指定を受けました。

6つの協力病院と共に、基幹診療施設として

平成18年、獣医師法が一部改正され、その施行にともなって「診療を業務とする獣医師は、免許を受けた後においても大学の獣医学に関する学部若しくは学科の附属施設である診療施設又は農林水産大臣の指定する診療施設において臨床研修を行うよう務める旨の規定が追加」されました。

この研修施設は「小動物」と「産業動物」に区分され、それぞれ単独型と協力型があります。私たち、動物臨床医学研究所グループとしては、倉吉動物医療センター・山根動物病院(鳥取県)を基幹診療施設とし、他に6つの病院を協力診療施設として指定を受けています(下記参照)。

動物臨床医学研究所(公益財団法人)

動物臨床医学研究所(公益財団法人)

平成3年、山根義久氏(倉吉動物医療センター・米子動物医療センター会長)らが中心となって設立した財団法人鳥取県動物臨床医学研究所が前身。平成23年4月、内閣府より公益財団法人動物臨床医学研究所として認定された。 主な事業として、動物臨床医学会の年1回の学会開催のほか、獣医学に関する臨床的研究や刊行物の発行、獣医療スタッフの教育・養成、野生鳥獣の保護管理まで広範囲な活動を行っている。

農林水産大臣指定
小動物臨床研修施設 協力型臨床研修施設
●基幹診療施設:
倉吉動物医療センター・山根動物病院(鳥取県)
●協力診療施設:
山陽動物医療センター(岡山県)
宇野動物病院(愛媛県)
小出動物病院(岡山県)
シラナガ動物病院(山口県)
舞鶴動物医療センター(京都府)
米子動物医療センター(鳥取県)
  • 倉吉動物医療センター・山根動物病院
  • 倉吉動物医療センター・山根動物病院

倉吉動物医療センター・山根動物病院
鳥取県倉吉市八屋209-1

?
臨床研修診療施設としての研修概要(2年間)

1年次 【臨床の基礎を学ぶ】
  • 診療の流れやカルテの記載法、診断法、画像診断、院内感染防御などについて学ぶ。
  • 現場で飼い主様との接し方、インフォームドコンセントのあり方の習得。
  • 指導獣医師のもとで、稟告の聴取法や身体検査法、各種検査法、注射法などの研修。
  • 動物の伝染病や寄生虫、予防法、消毒法、また、ズ―ノーシスや狂犬病予防事業など公衆衛生分野についての知識の習得。
【麻酔について学ぶ】
  • 手術の際には麻酔医の補助を行い、麻酔法として麻酔薬および麻薬の使用法や管理の方法、法的な事柄等を学ぶ。
  • 実際の麻酔に立ち会い、血管確保や気管内挿管、輸液法、疼痛管理法、麻酔モニターの見方などについての実習、異常があった場合の対処法の習得。
【指導医について臨床実習】
  • 大枠が理解・習得できた時点で、指導医のもとで簡単な診察を実施。半年をめどに指導獣医師のもとで麻酔を行い、手術法についても学ぶ。
  • 麻薬施用者の免許もこの頃に取得し、疼痛管理も行う。
  • 徐々に一般診察にも参加して診断治療を行い、緊急疾患に対する処置についても習得。
【合同カンファレンスや学会への参加・発表】
  • 臨床で行っている診療行為を体系的にまとめていくために、毎月開催される合同カンファレンス(知の市場)に参加し、また症例発表を実施。
  • カンファレンスでは、様々な分野における教育講演、症例検討会が行われているため、自身が経験していない症例にも接し、各分野における知識を深める。
  • 自身の発表を通して、抄録の書き方、スライドの作り方、発表方法、質疑応答への対処法なども習得。
  • 県学会や地区学会、動物臨床医学会にも積極的に参加し、発表を実施。
  • 現場の研究にて臨床的な技術と精神を学び、同時に学術的な教養・知識を習得。
【その他】
  • 当財団が鳥取県の指定救護施設で傷病野生動物(大半が鳥類)を受け入れているため、その診断治療にも携わる。
2年次
エコー実習
エコー実習
手術のアシスト
手術のアシスト

【術式を学び、手術をアシスト】

  • 他の獣医師のアドバイスを受けながらでも、ひとりで診察ができるように訓練。
  • 麻酔の準備、麻酔管理、術後管理などの訓練。
  • 実際に手術助手として手術に立ち会い、その過程で、術式と同時に器具機械の使用法や操作法なども習得し、手術の進行に合わせたアシストが行えるように訓練。
【学会活動への継続参加】
  • 学会活動は1年次同様に継続。
  • その他、臨床で必要な事柄を習得。
【研修委員会にて評価】
  • 研修評価は、日常の研修状況に加え、診療日誌や合同カンファレンスの発表およびその抄録、レポートなどにより、研修委員会において行う。

?

専門分野を持つ獣医師の育成へ

基幹診療施設と6つの協力病院は、それぞれ、循環器や血液疾患、外科や画像診断など特色ある専門獣医療分野を有する病院で、一次診療から、特色ある二次、三次診療まで臨床獣医師として必要な知識と技能を習得するだけでなく、専門分野を持つ獣医師を育てることにも力を入れています。今は、各動物病院所属の若手獣医師が研修医として2年間、それぞれの動物病院で実践的な研修を受けており、さらに年に4回ほど、各病院所属の研修医が集まって、動物臨床医学研究所グループの専門獣医師を講師として、画像診断や血液検査、眼の検査などの幅広い分野の実習も行っています。

研修プログラムのなかで重要な位置を占めるのが「合同カンファレンス」です。研修医は教育セミナーや症例検討会に出席するだけでなく、自身も発表の機会を与えられ、経験豊富な獣医師から、抄録の書き方やプレゼンテーションの仕方、そして発表内容についても専門的なアドバイスを受けることができますし、質疑応答では、双方向の対話がいっそう学びを深めてくれます。さらには、年次大会で発表を行うなど、研修医の頃から研究会や学会活動に積極的に関わっていくことになります。

獣医師としての人間性をいかに磨いていくか

獣医師として重要な知識、技能の習得については、研修施設での実践や研究会を通じて行っていますが、それと同じくらい大切なのが、人間性を磨くことです。

感謝される獣医療の提供を目指して

臨床獣医師は、日々、多くの飼い主様と接し、様々な動物の診療に携わっています。そのなかで、どんないい検査、治療法を提案させていただいても、飼い主様との信頼関係を築き、飼い主様の状況やニーズを的確に把握し、その時、その場に応じた話し方と検査、治療法を提示していかなければ、飼い主様に心から同意していただくことはできません。

私たちが目指している獣医療は、単に100%の治療を提供することではありません。動物の種類や性格、飼い主様との話し合いのなかから「最良の治療法」を選択し、飼い主様一人ひとりが「よかった」と実感していただけるような「感謝される医療」の提供です。

そのためにも獣医師は、確かな診断、検査、治療技術を習得するだけではなく、飼い主様の想いと立場を理解し、飼い主様に信頼される人間になっていかなければなりません。

治療のあり方は多種多様で、正解が一つというものではありません。どんなにベテラン獣医師でも毎回「これでよかったのか?」と自問自答しながら、日々研鑽に努めています。

だからこそ、研修医の段階から飼い主様と積極的に接してもらい、失敗を重ねるなかで、飼い主様との接し方、インフォームドコンセントの難しさ、大切さを学んでいってもらいたいと思っています。

「命」を預かる医療従事者として「命」の尊さを知り、感謝の気持ちを持ち続けなければならない

2年ほど前から、山根義久理事長は生家を改装して、獣医師をはじめ動物看護師、動物病院スタッフを受け入れ、米や野菜、鶏や羊、蜜蜂などを育てる農業体験を通じて、命を育み、人間形成を行う「山根村塾」を運営しています。日々、獣医療の現場で「命」と向き合う人間としていかに生きるべきか、何をなすべきかを学会や研究会での発表だけでなく、実体験を通じて自らが感じることができる場を提供しています。

飼い主様の喜びが、獣医師としての自分の喜びとなりました
塚田悠貴さん
公益財団法人 動物臨床医学研究所
獣医師
塚田悠貴さん
(研修医2年目)
?

私は、獣医科大学卒業後、循環器疾患の勉強がしたくて動物臨床医学研究所に入りました。研修医としての1年目は、とりわけ飼い主様との接し方や手術の時の麻酔の仕方をしっかり学ぶことができて、すごくよかったです。臨床現場での緊張感、実際の飼い主様との血の通ったやりとりは、大学では学ぶことのできない貴重な体験でした。

●普段、接することのない症例を学ぶ機会に
月に一度の合同カンファレンスでは、この病院(倉吉動物医療センター・山根動物病院)であまり見かけない血液の疾患など貴重な症例について数多く学ぶことによって、常にいろんな視点から病気を診断していくことの大切さを実感しています。

?
●他の病院の先生方から様々な専門分野の知識を吸収

また合同実習では他の病院の先生方から、血液の検査の仕方や目の検査の仕方、画像診断法などについて学ぶことができ、さまざまな分野の専門的な知識、技能をしっかりと身に付けていかなければならない、という心構えができました。

●年次大会で、緊張しながら発表も体験

臨床医学会の年次大会でも発表する機会をいただき、先天性心疾患とネコの骨盤狭窄について、いろんな症例を集めて発表させてもらいました。いろんな先生方からさまざまな質問をいただき、とても緊張しながらお答えさせていただきました。

●飼い主様の気持ちをくみ取って治療を選択する難しさを実感

また、人間教育面でも、獣医師としてのあり方や、飼い主様との接し方、動物と人との共生など学ぶことが多いです。

最初、獣医師は病気を診て、治すことが何よりも重要だと思っていましたが、ワンちゃん、ネコちゃんたちはしゃべれないので、飼い主様によくお話をうかがい、飼い主様とワンちゃん、ネコちゃんたちの想いをくみ取って、それぞれに最適な治療法を選択していくことの大事さ、むずかしさに気づかせていただきました。そうして、飼い主様が「ワンちゃん、ネコちゃんが良くなってうれしい」と喜ばれる姿に接することが、自分にとっての大きな喜びだと感じられるようになりました。

第33回動物臨床医学会年次大会のご案内 The 33th Annual Meeting of Japanese Society of Clinical Veterinary Medicine

今年も年次大会が開催されます。皆様の積極的なご参加をお待ちしています。
詳細はホームページをご覧ください。
http://www.dourinken.com/taikai.htm

日時 :
2012年11月16日(金)~18日(日)
会場 :
大阪国際会議場(グランキューブ大阪)  大阪市北区中之島5-3-51
主催 :
動物臨床医学会・(公財)動物臨床医学研究会