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応対しやすい受付カウンター

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応対しやすい受付カウンター

『ベッツワンプレス 2007秋号(Vol.12)』掲載分

応対しやすい受付カウンター

動物病院のカウンターの実情

実は受付カウンターについて、看護士さんの応対セミナーで私は何度か取り上げてきました。お伝えしたことは、多くの看護士さんにご納得いただけたようにも感じていますが、従業員が、経営者である院長先生のコンセンサス無しに、カウンター周辺の設営を勝手に変更したり、新人さんなら、先輩の置いたものをのけたり、配置換えをしたりするのは、心理的に難しいと思います。看護士の皆さんにお伝えしたことが現場で検討され、反映されなければ、従業員に時間や交通費、セミナー受講料などコストをかけていただいた意味がありません。院長先生にも直接お伝えできるこのシリーズで改めてご提案させていただきますので、ご検討をいただければ嬉しく思います。

さて、カウンターはどんな形状でしょうか? ストレートに横長ですか?L字型、またはU字型ですか? 獣医師なら獣医療に関する設備、器具等などに、関心が集中するのは当然のことだと思いますが、開業されたとき、受付カウンターについては、どの程度お考えくださったでしょうか?また、現時点でカウンター上の設営について、経営者である院長先生の意図は何%くらい反映されているでしょうか?また、何かの意図が反映されて現状があるのでしょうか?それともスタッフにまかせきりで、いつの間にか現状のようになっている…というようなことはありませんか?

受付、薬の説明、精算、療法食など物の受け渡し、病院によっては問診…等、多くの業務がほとんど全ての来院飼主に対してカウンターで行われますね。今、カウンターの上には何が載っていますか?様々なパンフレット、サンプル商品、物販商品、花、観葉植物、動物の置物…等ですが、私の見たところ、動物病院では不要な物を乗せすぎていることが多いように思います。

顧客動線を考えて、難しい応対の発生を防ぐ

飼い主さんとの向き合う対応スペースが「一人分」しかないとしたら、間違いなく物をのせすぎです。なぜならば、レストランやスーパーのレジカウンターと違って、精算時のみに順番に縦並びすることを飼主様は当然とは感じないからです。前にいる人の背中について、縦並びをして待っていてくれるなら、応対も楽なのですが、精算業務の途中に飼い主さんが入って来られると受付業務は同時に発生しますね。つまり、病院の顧客は横並び…ここが非常に重要な点です。清算業務時だけにカウンターに集中する他の業種とは、顧客の動線が全然違うのです。病院では必ず、飼主様が来た時と帰るときの2回、カウンターでの応対業務が発生するのだということを前提に、カウンターの機能を考えなくてはなりません。時には精算中に2人続けて飼主様が来院し、更に2つの受付業務を同時に発生させる現象が起ります。

それなのに、もしも一人しか対応できないスペースしか残っていなければどうなるでしょう?当然、受付と精算の業務を全く同じ場所ですることになりますから、来院の飼主様は、精算の飼主様の肩越しでしか、カウンターの中の人と対峙できなくなりますね。応対者は、目の前の飼い主さんの斜め後ろに立っている人の診察券を、受け取ることすら難しい状況が起こります。肩越しの応対は、非常に難しいのです。目の前にいる人を差し置いて、その後ろの人を応対しなくてはならないので、心理的に声をかけられない人もいます。すると後ろに立つ来院の飼い主様を放置せざるを得なくなりますね。来院の飼主様は状況を見て、その場で立って待っていたり、しばらくしてから、椅子に座ったり…自分で判断しなくてはなりません。来院したと同時に不快な思いをさせてしまうのですね。

長さを利用して受付・精算のスペースを分ける

なぜカウンターは長いのでしょうか?複数の人の応対を同時にこなすためです。それでなくとも、「動物を連れている」人ばかりが来られるので、ピッタリ寄り添って立てる状態にはないという、動物病院の来院顧客の特性をしっかり把握してカウンター業務がスムーズに遂行できることを考えなくてはなりません。

横並びの応対が頻繁に起るのですから、少なくとも2人が、できれば、3人が横並びできるスペースを確保しましょう。その上で、受付と、精算のスペースを意識的に分けることは簡単なことですが、非常に効果があります。精算業務は薬の受け渡しも含め長くかかりますが、こちらが呼び出すので、業務が重なることは避けられますが、受付はそうは行きません。飼主様のペースでこちらの都合に関係なく発生します。しかし、精算に比べたらはるかに短時間ですみます。短い業務を長い業務のために長く待たせるという現象を避けるために、入り口に一番近いところを受付スペース、奥を精算スペースと決めるだけで、精算中でも、入り口まで視線をさえぎる人が物理的にいなくなります。ご来院の飼主様とアイコンタクトが取れ、挨拶し、診察券を容易に受け取ることが可能になりますね。出入り口に一番近いところにレジを設置するのは、飲食店等には適しています。入店時には顧客がレジカウンターを素通りするので、人がカウンターで応対する必要はありません。つまり…飲食店のレジは入り口ではなく出口に設置してあるのです。飲食店には行くことが多いので、見た感じで安易に「レジは入り口に近いところに置く」という思い込みはないでしょうか。顧客動線が完全に異なり、来院時に必ず応対する必要のある病院が同じようにしてしまっては、仕事がしにくくなって当然です。

応対がしやすい作業台にするために

スペース確保のために、カウンターの上に置くものは厳選しましょう。カウンターは飾り台ではなく、受付や精算業務を展開する作業台です。誰もいない状態でカウンターの「見た感じがよいか」ではなく、人が向かい合って「仕事がしやすいかどうか」を優先しましょう。先生も診察台や手術台に不要なものがのっていては仕事がしにくいでしょう? 「受付」と書いたスタンド型の表示ボードは必要でしょうか?受付はどこ?と迷うような状況なら別ですが、動物病院ではどこが受付なのか一目瞭然ではありませんか? また、カウンターの中央や、L字型のコーナー置いてある視界を防ぐ高さのものは、飼主様の接近を察知しにくくしますし、物の受け渡しをするスペースを塞いでしまいます。特にL字型カウンターは応対者が物理的移動をせず、90度の角度で同時接客が可能になるよう作られているのです。コーナーを塞いでしまってはL字型の意味はなくなります。

受付は病院の顔です。飾りとしての置物や、花や、観葉植物が応対の邪魔になっていないかどうか、あるいはどこなら邪魔にならないか、レジの置き場をどこにするか…等、スタッフと一緒に考えてみられるのもよいのではないでしょうか。スタッフの受付業務の改善意識が高まる切っ掛けにもなると思います。

著者紹介

坂上緑
動物病院接客コンサルタント
坂上 緑(さかがみ みどり)
●動物病院接客コンサルタント
●大阪ペピイ動物看護専門学校「マナーとコミュニケーション」講師。
●大阪府箕面市「北摂夜間救急動物病院」執行役員。
●第25回動物臨床医学会スタッフセミナーで「飼い主さんと良い関係を築くために」のテーマで講演を実施。
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