「全国犬猫飼育実態調査」はペットフードの事業者を中心とした99社(正会員62社、賛助会員37社/2014年12月時点)で組織する一般社団法人ペットフード協会が、50,000人を対象に実施しているアンケート調査です。ホームページ http://www.petfood.or.jp/ でその内容を公開していますので、今回、その主な調査内容を紹介し、できるだけ正確な現在の状況を把握したいと思います。
1.【犬】 飼育頭数の推移
犬の飼育頭数が減少傾向にあることは、最近様々な場面で取り上げられるようになってきました。表1は、犬の飼育頭数が近年減少していることを明確に数字で示しています。それまで増加してきた飼育頭数は2008年の約1,310万頭をピークに減少に転じ、2009年までの1年で約58万頭、2010年には約66万頭が減少し、それ以降もその減少は歯止めがかからず、2014年の調査では約1,035万頭となっています。
2.【犬】年齢の分布
表2は犬の年齢分布推移ですが、0~6歳の頭数は全体の43.5%、特に0歳~1歳の幼齢犬の割合はわずか3.4%にとどまっています。これに対し、7歳以上の高齢犬は53.4%、その中でも10歳以上は34.7%と犬の年齢分布も現在の日本の人口構成にも似た「高齢化」が特徴となっています。現状の頭数を維持するには、0~1歳の幼齢犬の割合が全体の8%程度必要と考えられています。そのため、幼齢犬の頭数が増加せず現状のまま推移すると、53.4%を占める7歳以上の高齢犬の多くが亡くなる5年~8年後には大幅な頭数の減少が避けられない状況であることを意味しています(表3)。
3.【猫】飼育頭数の推移
猫も2008年に約1090万頭とピークを迎え、その後若干の減少はありましたが、この数年は微増で推移しています(表4)。
猫は2014年の調査では0歳(幼年期)の割合が5.7%と2013年の8.1%から大きく低下しています(表5)。子猫、幼齢猫の割合が8%程度を維持しなければ、数年後には犬と同様に猫の飼育頭数も減少に転ずることが予測されます。
4.犬・猫の平均寿命の推移
表6をみると、2014年での犬の平均寿命は14.17 歳、猫の平均寿命は14.82 歳と2013年と比較しても大きな変化はみられませんが、以前に比べると長生きする傾向にあることがわかります。犬は中・大型犬に比べ、超小型犬、小型犬の寿命がやや長く、猫は「家の外に出ない」猫の平均寿命15.69歳に比べ、「家の外に出る」猫ですと13.19 歳とその差が顕著にみられます。外飼いから室内飼育へ、共に暮らすパートナーとして大切な存在に変化し、飼育者の意識の向上とそれをサポートする動物医療従事者との連携も強くなり、今後も寿命の延伸が進むと考えられます。
5. 犬・猫の飼育率と飼育意向率
飼育率(全世帯で犬・猫を飼育している世帯の割合)は犬、猫とも各世代で近年低下しています(表7)。比較的飼育率の高い50~60歳台も同様の傾向が見られます。
飼育意向(現在、犬や猫を飼育していない方で、今後、飼育してみたいと考えている分の割合)についても、各年代で低下の傾向がみられます(表8)。「犬や猫を飼育してみたい」と考えている方が、飼育しやすい環境の整備やサービスの提供がこれまで以上に求められています。
2020年には高齢者人口(65歳以上)が日本全体の約30%にもなり、その後も「少子高齢化社会」が進むことが予測されています(表9)。現在減少傾向にある犬・猫の飼育状況が変わらずに進むと、人〈飼い主さん〉もペット〈犬や猫〉も長寿で高齢、若年層の飼い主さんが増えずに、全体の飼育頭数も減少する、といった状況を迎えることになります。これから、このような社会環境の変化にどう対応していくか、何かできるのかを動物医療業界だけでなくペットに関連する企業や団体を含め全体で考え、取り組んでいく必要があります。