いつまでも自由気ままで、年齢を感じさせない子も多い猫。
犬ほど明確に高齢期への移行がわかりにくいのも、猫の高齢期の特徴でもあるように思います。
そこで、見落としがちな変化や毎日の暮らし方など、愛猫がずっと元気でしあわせに過ごせるためのポイントを、獣医師であり、自身も4頭の猫の飼い主さんでもある村田香織先生にお話を伺ってきました。
毎日の暮らしの中での触れ合いと観察。
動作や排泄物、排尿の様子や、体に触ってしこりなどの異常がないか。毎日の暮らしの中での愛猫を観察しましょう。触れて皮膚の感じや痛がるところ、歯をみてあげる。肥満度のチェックも大切で触って肋骨がわかるか、下腹部に脂肪がついていないかなども見ましょう。猫は元気がなくても、それとわかりにくい動物であるので、動いてる様子を観察するのは難しいですが、本来は上下運動をする動物なので、高い場所に登るという行動は指標になります。
ある程度の段差を付けてちょっとごはんを置いておいてあげるとか、一緒に遊びながら観察をしてみる。また、歯周病をはじめ、口内炎など口のトラブルも多いので、食べにくそうにしている、回りにこぼしたり、食べ物を前にしばらく思案している・・・など食べ方をチェックするのも大切ですね。そのように意識して見ていると、『今日はなんか違う』と気付くことがあるはずです。
運動ができなくなってきたり、動けなくなってきたらマッサージを。
動かさないと筋肉は落ちる一方なので、マッサージやなでてあげたりするのはおすすめです。例えば抱っこをしたまま屈伸運動をしたり、ちょっとでも体を動かすように。イヤがる場合は、無理強いをしないように猫の気持ちいい範囲で行いましょう。
ブラッシングや爪切りなどケアしてあげましょう。
高齢になるとグルーミング行動をしなくなる子もでてきます。毛づくろいをしなくなってきたら、ブラッシングをしてあげましょう。歳をとると白髪が出てきたり、若い時のような被毛の状態ではないですよね。また、爪とぎをしなくなってきたら爪切りを。3歳以上の80%は歯周病と言われる最近では、デンタルケアも大切です。歯みがきが難しいようであれば、デンタル系フードやおもちゃなどを活用するのもいいですね。
寝床とトイレくらいしか動けなくなったら・・・
猫が嫌がらなければ、寝床とトイレを近くしてあげるのもいいですね。
また、トイレをまたぎにくくなる場合は、踏み台などで段差をなくすような工夫を。
病気の予防・早期発見、早期治療を。
猫は1年に4~5歳は年をとります。前年の検査で問題がなくても、その後の1年間に何が起こっているかわからないので、気が付かないことを発見するためにも、年齢関係なく健康診断は大切だと思います。病院では、高齢猫の検診というのをやっていますが、何かしら症状がある子は病気にかかっていることが多く見られます。そして、早期発見には飼い主さんの気付きがきっかけになることもあるので、日々の観察が大切になってきます。
いち飼い主としての想い。
うちで最年長の子は14歳ですが、若い子と一緒にまだまだ元気に遊んでいます。体の健康=心の健康と考えているので、運動と刺激のある生活を心がけていますね。
最近は少し、猫も犬も人間も自然からかけ離れすぎているところ、環境が整いすぎているというか、過保護気味な部分があるのかなと思っています。
例えば、朝起きたらまず一番に猫にご飯・・・というようにしなくても、たまには、少し待ってもらって猫がお腹が空いた、って思う時間があってもいいんじゃないかな。
一日一日を大切に、一緒にいる時間を満喫する。楽しむ。
そういうひと時を持つことは、とても大切だと思っています。
これからの季節だと、猫たちが日向ぼっこをしているところに混ざって、一緒にまったり楽しんでいます。
一日のうち、たとえ10分、15分でもいい。触れ合う時間を大切にしたい。
特に愛猫が歳をとったら、そういう時間を習慣にしてほしいな、と思います。
いずれは、彼らの方が先に逝ってしまうので、そうなったとき後悔しないためにも。
出会った時からそのあたりを意識してできればいいですけど、一緒にいる十数年の中には、忙しかったり、気持ちに余裕がなくて、なかなかできない時期もある。
でも高齢期にさしかかったかなと思うときには、考えてもらいたいですね。
子猫の時はかわいいし、目が離せない部分もあって、やはり自然と時間を掛けている。
その後、4、5歳くらいから落ち着いてくるから構わなくなるというか、関係性も以前に比べて薄くなってくる時期があると思うんです。
だからこそ、残されている時間を大切に、一日一日を楽しんで暮らしていきたいですよね。
意識をほんの少し変えるだけで、
愛猫の歳の重ね方が違ってくると思っています。
運動や食事管理、環境、コミュニケーション。基本的なことを大切に。年齢によって必要なものは変わってきますが、基本的にはさほど変わらず個体差やその時々の状況でアレンジをしていく。そのためにも子猫の頃から触れられることを好きな子にしておく、日々の中で触れ合う時間や観察するということが大切ですね。
先生から介護している飼い主さんへ
愛猫が歳をとって介護を必要としている飼い主さんで、心配などで気分が落ち込んでいる方には、それでも愛猫に明るく接してあげてと伝えています。つらいかもしれませんが、明るい表情をつくるだけでも、飼い主さん自身も前向きな気持ちになり、愛猫と穏やかな時間を過ごせると思います。