犬の尿の「役割」
体内の水分コントロールと老廃物の排出
人と同様に、犬の尿は体内の水分量を適正に維持するとともに、体の中の老廃物を排せつする役目をもっています。血液中にたまった不要な成分や毒素は腎臓でろ過され、老廃物は余分な水分とともに尿として体外へ出されます。
情報伝達
さらに、犬にとって尿にはもう一つ重要な役割が。尿にはフェロモンが含まれており、このにおいを嗅ぐことで、その犬の性別や年齢をはじめ、健康状態、感情、支配性の強さなど、様々な情報を読み取れるといわれています。犬たちは、散歩中、所々に残された尿のにおいを嗅ぎ、他の犬の情報を手に入れているのです。
また、自分の尿をつけて、他の犬に自分の縄張りであることを知らせるのが、マーキングと呼ばれる行動。オス犬が片足を上げて尿をするのは、より高い位置に尿をつけることで、自分の身体を大きく見せる(=強さを誇示する)ためといわれています。
健康ないい尿とは?
健康な状態の尿は、淡い黄色~麦わら色で透き通っています。においは少しアンモニア臭を感じられるくらいが正常です。
また、pHの数値は5~8の間で、平均6.5程度の弱酸性が正常範囲とされています。食べたものや体調によって変動し、数値は安定しないのが通常ですが、長期間にわたって、平均値から酸性またはアルカリ性に大きく傾いたときは要注意。尿中のミネラル成分が結晶化し、尿路に結石ができやすくなります。
尿のこんな変化に注意
尿の状態は、食事内容や飲水量、健康状態などによって変わってきます。ふだんとの違いが重篤な病気の兆候であることも多く、愛犬が健康なときの尿の量や回数、色を知っておくことは、病気の早期発見にもつながります。「おかしいな」と思ったら、まずは動物病院に相談してみましょう。
量が違う
少ない・出ない
尿の量が急に減ったり、まったく出なかったりして、嘔吐などが見られる場合は、急性腎不全の可能性があり、非常に危険な状態です。
また、頻繁に排尿しようとするのに尿が少ししか出ないときは、膀胱炎や尿路結石、前立腺の病気などが疑われます。尿がまったく出ないようなら、尿路結石による尿道閉塞(オスに多い)かもしれません。その場合は命に関わる危険な状態ですので、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
多い
水をたくさん飲んで、大量の尿を出す「多飲多尿」のケースでは、糖尿病、クッシング症候群、尿崩症などのホルモンの病気や、避妊手術をしていないメスの場合は子宮蓄膿症なども考えられます。
また、猫ほど多くはありませんが、慢性腎不全で腎機能が損なわれ、必要な水分を再吸収できず多尿になっていることもあります。
色が違う
濃い
朝の尿は色が濃いのが普通ですが、それ以外のときでも尿が濃い場合は、水分不足による脱水症状の可能性も。また、非常に濃い黄褐色の場合は、肝臓などの疾患によりビリルビン(胆汁に含まれる物質)量が増えているのかもしれません。
薄い
日常的に水をたくさん飲んで、色が薄い尿を大量にする場合は、ホルモンの病気や慢性腎不全などといった重篤な疾患の可能性もあります。色が薄いからと、摂水制限をしたりすると脱水を起こしかねませんので、安易に対処するのは禁物です。
赤い
尿路結石、膀胱炎、前立腺の異常などでは、炎症や結石によって膀胱や尿道の内壁が傷つけられ、血尿が出ることがあります。
また、タマネギ中毒やバベシア症にかかったり、過剰な運動をしたりして、短時間に大量の赤血球が破壊されると、ヘモグロビンが腎臓から排出され、尿が赤くなることがあります。これは血色素尿と呼ばれるもので、血尿とは異なる症状です。
白く濁っている
膀胱炎や前立腺炎など、細菌感染が原因の場合は、白血球が混じった白濁尿になることもあります。
その他
においが違う
尿がきつくにおう場合、膀胱炎など尿路に化膿性・炎症性の病気が起きているかもしれません。また、糖尿病の場合は、甘いにおいがすることもあります。
尿がキラキラ光る
尿の中に見えるキラキラ光る粒は、尿の中のミネラル成分が結晶化したものです。放置すれば尿路結石になりかねません。
いつもと違う場所で排尿する
泌尿器系の病気で、トイレまで排尿ががまんできないのかもしれません。また、精神的ストレスが原因で、トイレの失敗をくり返すこともあります。高齢犬の場合には、認知症の兆しとも考えられます。