鼻の大切な役割とは
においを感じる
鼻と聞いて、まず思い浮かべるのは、においを感じる役割でしょう。においは鼻腔内の粘膜のどこでも感じられるわけではなく、鼻の奥にある嗅上皮(きゅうじょうひ)と呼ばれる限られた部分でのみ感知できます。
呼吸を助ける
鼻は呼吸器でもあります。鼻腔内は複雑な形をしていて、粘膜で覆われています。外から取り込まれた冷たく乾いた空気は、粘膜の水分によって加湿され、また鼻腔内を通るうちに温められて、気管や肺への刺激を和らげてくれます。
生体防御の働きをする
空気中には、ウイルスや細菌、ホコリなど、様々な異物が含まれています。鼻粘膜には繊毛と呼ばれる細かい毛があり、これらの異物を吸着し、繊毛運動によって鼻の外へと排出します。また、鼻粘膜にある白血球やリンパ組織は細菌やウイルスを撃退する役割も。鼻は外からの危険な異物が体内に入り込まないように戦う、最前線でもあるわけです。
温度を測る
温度計の役割もするのが、猫の鼻の大きな特徴。鼻で吸い込んだ空気の温度によって、0.5℃の違いも判別できるとか。よく「猫舌」といわれますが、実は、猫は舌ではなく、鼻で熱い冷たいを判断しているのです。
猫の嗅覚は人とどう違う?
嗅覚は人の数万から数十万倍
鼻の役割自体は猫も人も大きく変わりませんが、においを感じる能力は、圧倒的に猫のほうが優れています。
においを嗅ぐ力は、鼻腔の奥にある嗅上皮という粘膜の広さと、そこに存在する嗅細胞の数によって決まります。人の嗅上皮は3から4cm2しかありませんが、猫の嗅上皮は人の5から10倍、嗅細胞の数も人の500万個に対し、猫は1000万個もあり、感度も敏感です。
嗅ぎ取る能力はにおいの種類によって異なりますが、猫の嗅覚は人の数万から数十万倍といわれています。この数万倍優れているというのは、空気中を漂うにおい分子の濃度が数万分の1になっても嗅ぎ取れるという意味です。においによっては人の1億倍ともいわれる犬ほどではありませんが、猫も十分優れた嗅覚の持ち主です。
フェロモンを感知する器官も
さらに猫には、鼻腔と上顎との間に、左右一対のヤコブソン器官(鋤鼻器(じょびき))と呼ばれるフェロモンを感知する器官があります。フェロモンはにおい物質に似た揮発性の物質で、発情期のメス猫が発する性フェロモンのほか、猫がよく頭や顔をスリスリこすりつけるのもフェロモンの一種です。また猫に酔ったような独特の反応を起こさせるマタタビやキャットニップを嗅ぐのも、ヤコブソン器官の働き。いずれも人には感じることのできないにおいです。
猫が口を半開きにして、笑ったような表情をしているのを見たことはありませんか?これは「フレーメン反応」と呼ばれるもので、フェロモンやにおい物質を鼻と口からヤコブソン器官に送り込んで、においを嗅いでいるしぐさです。人の場合、このヤコブソン器官の存在や働きについては、いまだよく解明されていません。
猫にとって危険なにおいもある
「愛猫と一緒にアロマセラピーを」と考える人もいるかもしれませんが、猫にアロマは危険。通常、鼻や口から吸引された精油成分は、最終的に肝臓で代謝されますが、猫は精油成分に対する代謝機能が不完全で、急性中毒を起こしたり、徐々に蓄積されて肝不全を起こす可能性もあります。成分は皮膚からも吸収されますから、芳香浴だけでなく、アロママッサージやアロマシャンプーなども注意が必要。対して、犬は精油成分を代謝できます。
猫に見られる鼻のトラブルとは?
鼻水とくしゃみが出る「鼻炎」
鼻腔がウイルスや細菌、真菌などに感染したり、アレルギーが原因となって発症し、鼻水やくしゃみなどの症状がでます。初期はサラッとした鼻水ですが、重症化するとドロッとした膿のような鼻汁に。炎症が鼻の奥まで広がり、副鼻腔炎を引き起こすこともあります。
鼻血に注意!「鼻腔腫瘍(びくうしゅよう)」
多い病気ではありませんが、鼻腔内にできる悪性腫瘍。症状は鼻汁やくしゃみ、鼻血など。ただし悪性リンパ腫の場合は、鼻血を伴わないことも多く、発見が遅れやすくなります。
短頭種に多い「鼻孔狭窄(びこうきょうさく)」
ペルシャやヒマラヤンなどの短頭種に多い鼻の先天性の異常。生まれつき鼻孔(鼻の穴)が狭く、鼻を鳴らしながら呼吸したり、鼻水を飛ばしたりします。運動時や興奮時に酸欠になりやすく、日常生活に支障を来す場合は、鼻孔を広げる外科手術を行うことも。