「吐く」をよく見極めよう
食べた物を口から戻すことを「吐く」といいますが、猫が吐く背景には、いろんな原因が潜んでいます。
愛猫が吐いたときは、その様子をよく観察しておくと、動物病院で受診する際にも、診断がつきやすくなります。
チェックリスト
- ◯ 吐いたのは1回だけか、複数回か?
- ◯ 吐いたときの状況は?
(ガツガツ食べた後に吐いた、寝起きに吐いた など)
- ◯ 吐いたのは食後何分(あるいは何時間)後か?
- ◯ 吐いた物はなにか?
(未消化のものか、胃液だけか、毛玉か、血液や異物の混入は?)
- ◯ 吐いた後の様子は?
(元気で食欲もある、苦しそうにうずくまっている など)
- ◯ 下痢など、嘔吐以外の症状を伴っていないか
- ◯ 異物や中毒性物質を口にした可能性は?
様子を見ていても大丈夫なケース
愛猫が吐くと、飼い主さんは心配のあまり、うろたえがちですが、猫は比較的よく吐く動物なので、吐いたからといって、必ずしも病気というわけではありません。例えば次のようなケースで、吐いた後に元気で食欲もあれば、様子を見ていてもかまわないでしょう。
ガツガツ食べて吐く
食欲旺盛な猫がガツガツと食べて、食後すぐに吐くことがあります。猫は吐いた後も元気で、さらに吐き戻した物を食べてしまうこともあります。これは慌てて食べたものが未消化のまま吐き出されただけなので、とくに心配はいりません。
白い泡や黄色の液体を吐く
朝起きたときや食前などに、白い泡のような液体や黄色い液体を吐くことがあります。白い液体は胃液、黄色い液体は胆汁で、胃が空っぽで逆流してきたものです。空腹が原因の場合が多いので、食事を小分けにして与え、食事間隔が開きすぎないようにしましょう。それでも改善しない場合は、動物病院へ。
草を食べて吐く
草を食べて吐くこともよくあります。吐き気をもよおしたり、胃酸過多で胸やけを起こしたときなどに、草を食べて、その刺激で、胃の中に滞る食べ物や余分な胃酸を吐き出そうとしているのです。体に悪いものを排出しようとする生理現象ともいえるので、繰り返さなければ問題ありません。
ただし、植物のなかには食べると中毒を起こす危険なものもあるので、猫草など、イネ科の安全な草を用意してあげましょう。
毛玉を吐く
草といっしょに、あるいは単独で、毛玉の固まりを吐き出すこともあります。これは、猫がセルフグルーミング時に飲み込んだ抜け毛で、胃の中にたまったままだと毛球症になりかねないので、吐くのは悪いことではありません。
もっとも、あまり頻繁に嘔吐を繰り返すと、脱水を起こしたり、胃炎を引き起こす原因になるので、ブラッシングで抜け毛を除去したり、抜け毛を便と一緒に排出させる毛玉ケア用フードなどを利用するといいでしょう。
危険なケースは、すぐに動物病院へ
吐く原因で最も多いのは食べすぎによる急性胃炎ですが、嘔吐にはいろんな病気が関連しており、時には消化器以外の病気の可能性もあります。次のような危険なサインが見られたら、すぐに動物病院へ行きましょう。
繰り返し吐く
一度吐いただけで他に下痢などの症状もなく元気な場合は、半日から1日絶飲食して、その後、何もなければ大丈夫でしょう。嘔吐への対応は、絶食と絶水で様子を見ることが基本です。
しかし、繰り返し吐くようなら、消化器系の病気、異物の誤飲、毒物による中毒、ウイルス性感染症などの疑いが。慢性的な嘔吐や下痢を繰り返すものには、炎症性腸炎(IBD)と呼ばれる厄介な病気もあります。
腹痛を伴う
苦しそうに背中を丸めてうずくまっているときは、腹痛の可能性。
嘔吐物に血が混じっている
少量の血が混じっていたり、重い潰瘍や腫瘍では、出血で嘔吐物がコーヒー色になっていることもあります。
下痢、発熱、痙攣など、他の症状を伴う
下痢、発熱、ショック症状など、嘔吐以外にも激しい症状を伴う場合は、極めて緊急性大。ウイルス性感染症や中毒などの可能性も。猫はセルフグルーミングの習慣があるため、体についた除草剤や殺虫剤などの化学物質をなめ取って中毒を起こすこともあります。
嘔吐物に異物が混じっている
おもちゃの破片など、食事以外の異物が混入している場合は要注意。とくに猫は、ひもや糸、ボタン、ビニールなどの誤飲が多いようです。最悪、開腹手術が必要になることも。
嘔吐物が便のにおいがする
嘔吐物に便臭がする場合は、腸閉塞を起こしている疑いが。猫の細い小腸に、異物などが詰まって、消化中の食べ物が大腸方向へ流れなくなっている状態です。
こんなにある原因となる病気
由来する病気によっては、吐く以外にもさまざまな症状を伴います。
嘔吐以外の症状にも注意することが必要です。
-
食事の問題
急いで食べた、食事内容を急に変えた、異物を食べた、など。
-
胃内のトラブル
胃炎、胃潰瘍、腫瘍、幽門部の狭窄、胃捻転、誤飲による異物など。
嘔吐物に混じる血液や異物に注意
-
小腸のトラブル
慢性腸炎、腸捻転、誤飲による異物、寄生虫など。
異物による腸閉塞が起これば、緊急手術に。
-
腹腔内のトラブル
すい炎、腹膜炎、腫瘍など。
-
代謝性疾患
腎不全、肝不全、糖尿病、副腎皮質機能低下症など、代謝性疾患に伴うもの。
「多飲多尿」などの特徴的な症状も
-
薬物や中毒性物質
農薬・殺虫剤・殺鼠剤などの薬物、ネギ類・チョコレート・毒性のある植物などの猫にとっての中毒性物質を口にしたことによるもの。
中毒物質によっては、「痙攣」などの神経症状も
-
ウイルス性感染症
猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)、猫白血病ウイルス感染症などの感染性によるもの。
「発熱」や「下痢」を伴うことが多く、子猫はとくに要注意!
-
自己免疫疾患(炎症性腸疾患)
炎症性腸疾患(IBD)は、嘔吐・下痢、食欲不振などが慢性的に続き、徐々に衰弱していく、猫の代表的な胃腸炎の一つ。
低アレルゲンの食事療法や、免疫抑制剤の投与で炎症を抑制
-
食道のトラブル
嘔吐ではなく、食べた物が胃に届く前に吐き出してしまう「吐き出し」を繰り返す場合は、食道のトラブル(食道拡張症、腫瘍、異物など)が考えられる。
吐き出しを繰り返す場合は病院へ