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秋から冬にかけて、愛犬の健康管理で注意すべき病気や日常のケアとは?
飼い主さんの気になる質問や心配事に、ペピイカタログの監修をしていただいている
みゅう動物病院 院長の本田善久先生がお答えします。 |
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冬にかかりやすい病気対策を教えて!
この頃、あまり水を飲まないので、泌尿器の病気が心配です。
尿石症の原因は、飲水量より食事内容。予防のためには、良質なフードを与えましょう。
暑いとき、犬は体温を下げるために、舌をハァハァさせて唾液を蒸発させるので、頻繁な水分補給を行います。しかし、冬はその必要がないので、飲水量は自然と減少するのです。
猫の場合は、冬に尿石症が増える傾向がありますが、犬にはそれほど季節性は見られません。尿石症の原因は、飲水量の減少より、むしろ食事内容が関わっていることが多いです。ミネラル量が適切に調整された品質の良いフードを与え、犬が飲みたいときに自由に飲めるように水が用意されていれば、それほど心配することはありません。
人は、寒くなるとインフルエンザが流行しますが、犬も注意が必要ですか?
犬には、人のような風邪や季節性インフルエンザはありませんが、似た症状の感染症があります。
冬に風邪やインフルエンザが流行るのは、空気の乾燥により、鼻やのどの粘膜のバリア機能が低下し、細菌やウイルスに感染しやすくなることと、寒さで体温が下がることにより、体の免疫力も低下してしまうからです。
犬には人の風邪に似た呼吸器系症状を示す、ジステンパーやケンネルコフというウイルス性感染症があり、とくに子犬は感染しやすい病気です。いずれもワクチンで予防できますので、冬だからというのではなく、定期的にワクチン接種をしましょう。
ノミやフィラリア対策はいつまで必要?
最終月、フィラリアの薬を飲ませ忘れました。蚊はもういないし、大丈夫ですよね?
フィラリアの薬は予防薬ではなく、駆虫薬。飲ませ終わりが早すぎると、感染の危険性があります。
蚊は気温15℃以上で吸血を開始するといわれ、フィラリアの予防期間は、蚊の活動開始1ヶ月後から、活動終了1ヶ月後まで。地域によりますが、だいたい4、5月頃から11、12月頃までです。なぜ蚊がいなくなってからも飲ませるかというと、この薬が予防薬ではなく、駆虫薬だからです。
つまり、薬を飲めば1ヶ月間、感染を予防できるのではなく、感染したフィラリアを月1回まとめて殺す薬なのです。ですから、蚊のシーズン終了時期に感染したフィラリアを逃してしまうことがないよう、1ヶ月待って最後の駆虫を行うわけです。蚊がいないとつい忘れがちですが、最終月までしっかり飲ませないと、感染の可能性が残ってしまいます。
最近のフィラリアの薬には、腸内寄生虫も同時に駆除できるタイプのものがあるので、おなかの虫の駆虫も兼ねて、通年で薬を飲ませている飼い主さんもいます。
夏にノミに感染して以来、月1回駆除薬を使っていますが、いつまで必要ですか?
確実を期すなら、通年予防をおすすめします。
昔は、春から夏がノミの繁殖シーズンといわれていましたが、室内飼育が一般的になった現在、いつまで予防すれば大丈夫という確実な目安はありません。
ノミは気温13℃以上、湿度50%以上で繁殖します。つまり、エアコンで適温にコントロールされた室内環境では一年中繁殖可能で、いったんノミを持ち込んでしまうと、根絶させるのはなかなか大変です。しかもノミが厄介なのは、人にも被害を及ぼすことです。夏に感染経験があるなら、なおさら通年予防をしたほうが安全でしょう。一方、マダニは季節性があるので、冬はとくに対策は必要ないでしょう。
寒い時期の運動や食事のポイントは?
犬の飼育書に「冬は給餌量を増やすように」とありましたが、太りませんか?
給餌量は飼育環境に合わせて調整。室内犬なら増やさなくてもいいでしょう。
昔は、屋外飼育が一般的で、夏と同じ給餌量だとやせてくることが多かったのです。寒い時期は、体温維持のために余計にエネルギーが必要だからです。
しかし、現在は、暖かい室内で飼われることが多く、体温維持にエネルギーが使われることもありませんので、あえて給餌量を増やす必要はないでしょう。かえって太らせる原因になるかもしれません。
給餌量は、飼育環境に合わせて調整してください。外で飼育している場合には、冬は、犬舎をあまり風の通らない場所に移動したり、入り口に毛布などをかけて風を防ぐなど、給餌量以外の配慮も忘れないようにしましょう。
寒がって散歩を嫌がるのですが、犬は寒さに強いはずでは?
最近の犬は寒がりです。散歩はできるだけ暖かい時間に。
犬は寒さに強いといわれますが、室内飼育が増えて、最近の犬はずいぶん寒がりになっています。冬の冷え切ったアスファルトの上を歩くのは、犬にとってもつらいと思います。散歩はできるだけ暖かい時間帯に出かけるようにしましょう。
また、室内と外気の極端な温度差は体に大きな負担となります。高齢犬や心臓疾患の持病をもつ犬などは、寒い日は無理して散歩に行かなくてもかまいません。
寒さ対策や暖房器具の注意点は?
こたつに入ってばかりで乾燥するせいか、フケが増えました。
皮膚病の可能性がなければ、保湿のスキンケアをしてあげましょう。
発疹や脱毛など、フケ以外に皮膚の異常は見られませんか?皮膚病の可能性がなければ、こたつによる乾燥が原因かもしれませんね。その場合には、ブラッシングや保湿機能のあるシャンプーやトリートメントでスキンケアをしてあげましょう。また、高齢犬や病気の犬が長時間こたつに入ったままのときは、時々、様子を見てあげてください。
ストーブやヒーターから離れないのですが、やけどをしませんか?
カイロやヒーターは低温やけどに注意して。ストーブやコードには事故防止のためのガードを。
ペットヒーターや使い捨てカイロなどに、長時間、直接体を密着させていると、低温やけどをすることがあります。熱くても逃げ場がない狭いハウスの中、動きが鈍くなっている高齢犬や病気の犬などはとくに注意が必要です。カイロやヒーターは、タオルでくるむなどの配慮を。
ストーブに近づきすぎて、被毛を焦がしてしまうケースも時々見られます。ストーブを倒せば火事にもなりかねませんから、暖房器具の周りは柵などでガードしましょう。
またコードはかじって感電すると、肺水腫や口の中のやけど、ショック状態を起こすこともあります。いたずら盛りの子犬がいるお宅なら、コードカバーで覆うなどの対策をしてください。
冬は寒そうなので、排泄は室内でさせたほうがいいでしょうか?
排泄物の観察は、病気発見のカギ
子犬のときからトイレでする習慣を。
季節に関係なく、マナーの面からも健康管理の面からも、室内で排泄させる習慣をつけるべきだと思います。排便・排尿のしかた、色、におい、量など、排泄物の観察は、病気発見のうえで非常に重要です。とくにおしっこは、土の上でしたら色も量もわかりません。成犬になってからのトイレ・トレーニングは時間がかかって大変ですので、できるだけ子犬のときから習慣づけましょう。