下まつげがなく、瞬膜とタペタムがある
目のしくみや働きは、犬も人も大きな違いはありません。
光が入ってくると、虹彩が開閉して光の量を調整。次に水晶体(レンズ)の厚みが変化して、網膜に像がきれいに写るようにピントを合わせます。網膜には、明暗を感じる視細胞と色を見分ける視細胞の2種類があり、入って来た光や色、形をとらえ、視神経を通じて脳へと伝えます。
もっとも、人と違うところもあります。まず、犬には「下まつげ」がありません。逆に人にはない「瞬膜(しゅんまく)」と「タペタム(輝膜(こうまく))」が犬にはあります。
瞬膜とは、角膜とまぶたの間にある「第三のまぶた」と呼ばれるもので、目の中に異物が入るのを防いだり、涙を目の表面に行き渡らせる働きをしています。通常はまぶたと一緒に動くので気づきませんが、時に白い膜が出たままになることがあります。
タペタムとは、網膜と脈絡膜の間にある反射層で、暗闇で犬の目が光って見えるのは、タペタムに光が反射しているため。これがあるおかげで、犬は暗い所でも目が利くのです。
失明につながる疾患に注意!
犬にも、人と同様、目の病気がたくさんあります。例えば、角膜が白く濁る「角膜混濁」、水晶体が濁る「白内障」、網膜が働かなくなる「網膜剥離」や「網膜萎縮」、眼圧が異常に高まり、視神経が圧迫されて萎縮する「緑内障」など。いずれも失明の危険性を伴う怖い病気です。
目の異常に気づいたら、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
犬の目は顔のやや横側についているため、視野は広く、人の180度に比べて250~270度ぐらいを見渡せます。その代わり、両目を使って立体視できる範囲はやや狭く、人の120度に対して100度ぐらいです。
動くものを認識する「動体視力」はたいへん優れています。1.5km離れた場所で手を振る人の姿に気づいたという実験結果もあるほど。
暗い場所でものが見えるのも、人より優れた点です。わずかな光でもタペタムが反射して光を増幅します。また、網膜にある光の明暗を感じる視細胞が人の7~8倍あり、弱い光でも敏感に感じ取ることができるのです。
犬の目は「近視」とみられ、視力は0.3ぐらいだとか。また、目が横についているため、70cm以内の間近は焦点が合わせづらく、ぼんやりとしか見えません。犬が目の前のものをしきりとにおいを嗅いで確かめるのは、そのためと言われています。
かつては、犬は白黒しかわからないと言われていましたが、最近は、いくらかの色は識別できることがわかってきています。
光のスペクトルの「赤-オレンジ-黄-緑」の範囲が大まかに黄色として、「青-紫」の範囲が、おおまかに青として認識されているようです。犬は、光の明暗を感じる視細胞がたくさんある代わりに、色を見分ける視細胞が人の10分の1ぐらいしかありません。夜間の狩りに必要な視力を得るために、色を見分ける能力を犠牲にしたのかもしれませんね。
どうして?目の不思議を解明!
(犬の目の色は何で決まるの?)
目の色は、瞳孔(瞳)を取り巻く「虹彩」の色で、皮膚や被毛と同様、メラニン色素の量や分布によって決まります。人と同じように、寒い地方が原産の犬種はメラニン色素が少なく薄い色、暑い地方の犬種は濃い色になる傾向があります。
(フラッシュで撮影すると、犬の目が赤や緑に光って写るのはなぜ?)
フラッシュの強い光が網膜で反射して見える光です。赤目になるのは、網膜の後ろにある脈絡膜という血管に富んだ部分の色が見えるためです。
また、犬には網膜と脈絡膜の間にタペタムという緑色の反射層があり、ここに光が当たると緑目になります。タペタムがあるのは網膜全面積の半分ぐらいで、赤目になるのはタペタムのない場所に光が当たったときです。