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症状から見つける猫の病気 おしっこが多い

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症状から見つける猫の病気 おしっこが多い

ドクターズアドバイスペピイキャッツ2012秋冬号

症状から見つける猫の病気 おしっこが多い

症状から見つける猫の病気 おしっこが多い
高齢猫の死因第一位、適切な治療とケアで長生きすることも可能
慢性腎不全

 慢性腎不全は、長い時間をかけて進行していく病気で、高齢猫の死因の第一位です。腎臓は再生することのない臓器なので、もともとかなりの予備能力を備えています。そのため病気が進行しても症状が出にくく、出たときには機能の75%が失われています。そして、比較的初期に現れる症状が「多飲多尿」。においのない色の薄い大量のおしっこで、異常に気づくことが多いようです。

 腎機能が低下すると、必要な水分が再吸収できず、大量のおしっこが出ます。そして、不足する水分を補おうと、たくさん水を飲むようになります。また、腎臓には血液を濾過する働きもあり、腎不全が進むと、十分に濾過できず、おしっことして排出すべき老廃物や毒素が体内に蓄積されて、尿毒症を引き起こすことにも。進行するにつれ、食欲不振や体重減少、嘔吐、下痢、さらに尿毒症特有のアンモニアくさい口臭がするようになります。

 治らない病気ですので、治療は進行を遅らせ、症状を和らげることが目的となります。食事療法、輸液療法(点滴)、投薬の他に、毒素を吸着して便として排出させる活性炭サプリメントが用いられることもあります。早期に発見し、適切な治療と日常のケアを行えば、長く維持していくこともできる病気です。

代表的な生活習慣病、猫にも増加中!
糖尿病

 糖尿病は、すい臓から分泌される「インスリン」の分泌量が低下したり(インスリン依存性)、十分に効かなかったり(インスリン抵抗性)で、糖分を細胞内に取り込めなくなり、血液中の糖分(血糖値)が異常に高くなって起こります。その他、クッシング症候群(副腎皮質ホルモンの過剰分泌で起こる病気)が原因で、高血糖になるケースも見られます。

 初期には、血液中に含まれる大量の糖分を排出しようとし、おしっこの量が増え、失われた水分を補うためにたくさん水を飲むようになります。また糖分が正常に利用されず、エネルギー不足のため、食欲は旺盛なのにやせてきます。進行すると、嘔吐や下痢、意識障害なども見られるようになり、放置すれば死に至ります。

 主たる治療は、血糖値のコントロールです。インスリン依存性の場合は、すい臓のインスリンを分泌するβ細胞が破壊され、インスリンを十分に作れないことが原因ですので、一生、インスリンを毎日注射し続けることになります。一方、インスリン抵抗性は、インスリンは分泌されるのに、肥満やストレス、慢性的な炎症疾患などが原因で、インスリンの効き目が悪くなって起こります。この場合には、食事療法による体重コントロールや血糖降下剤の服用だけで、血糖値を下げられることもあります。また、クッシング症候群が原因なら、その治療も行います。

 糖尿病の予防には、愛猫を肥満にさせないことやストレスのない生活環境づくりが基本です。

高齢猫によくある病気、急に活発になってきたら要注意!
甲状腺機能亢進症

 甲状腺機能亢進症は、「甲状腺ホルモン」の分泌過剰によって起こる病気で、高齢猫には比較的よく見られます。

 甲状腺ホルモンは、首に左右2つある甲状腺から分泌され、体の新陳代謝を促す働きをしています。過剰になると、食欲旺盛なのにやせてくる、動き回って落ち着きがない、目がギラギラするといった症状が見られ、進行すると、多飲多尿、嘔吐、下痢、毛づやの悪化なども出てきます。初期にはむしろ元気そうに見えますが、早く発見して異常な活性化を止めないと、急激に衰弱していきます。

 治療は、手術ができる場合には、大きくなった甲状腺(多くは腫瘍による)を切除してしまいます。また、甲状腺ホルモンの産生を抑える薬を服用する方法もありますが、根治療法ではないため、一生飲ませ続けることが必要です。さらに最近、新たな選択肢として、食事療法が可能になりました。甲状腺ホルモンの主成分であるヨウ素を低く制限した特別療法食で、毎日の食事として与えるだけで、甲状腺ホルモンのレベルを調整できるものです。

猫にはそれほど多くないが、「多尿」の典型的な病気の一つ
尿崩症

 大量のおしっこをし、大量の水を飲み、水が飲めない状態が続くと、簡単に脱水症状に陥ってしまう。それが尿崩症です。

 原因は、体内の水分量をコントロールしている「抗利尿ホルモン」の分泌異常や、分泌されても十分に働かないことによって生じます。通常、抗利尿ホルモンは脳の視床下部で作られ、脳下垂体に蓄えられており、必要に応じて分泌されます。腎臓がそれを認識すると水分の再吸収が促されます。ところが視床下部や脳下垂体に腫瘍や炎症があって、ホルモンが正常に分泌されなかったり(中枢性尿崩症)、ホルモンの分泌は正常なのに、腎臓に障害があってホルモンの効きが悪い(腎性尿崩症)と、水分が再吸収できず、大量のおしっことなって出てしまいます。

 治療は、中枢性尿崩症には、抗利尿ホルモン製剤の定期的な投与、腎性尿崩症には、ナトリウムを制限した食事療法や利尿剤などが用いられます。いずれのケースでも、猫が好きなだけ水を飲める環境にして、水分補給を滞らせないことが大切です。

 また、子宮に膿がたまる「子宮蓄膿症」でも、尿崩症が起こります。感染菌が作る毒素(エンドトキシン)が抗利尿ホルモンの働きを止めてしまうからです。子宮蓄膿症の治療をしない限り、症状は治まりません。