子犬や高齢犬はとくに危険、ウイルス性の感染症は、ワクチンで予防を
呼吸器感染症
犬の代表的な呼吸器感染症には、ジステンパーやケンネルコフがあります。子犬や免疫力の低下した高齢犬などは感染しやすいので、とくに注意が必要です。ワクチンで予防できる病気ですので、定期的なワクチン接種をおすすめします。
●犬ジステンパーウイルス感染症
犬ジステンパーウイルスによる感染症で、初期には鼻水や発熱、次第に咳やくしゃみ、嘔吐・下痢などが見られるようになり、さらに進むと、麻痺や痙攣などの神経症状を引き起こすこともあります。
発症すると非常に致死率の高い病気で、回復しても痙攣などの神経症状が後遺症として残ることもあります。
●ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)
犬パラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルスⅡ型、細菌などが単独もしくは複合感染することで起こります。空咳の発作や発熱など、人の風邪に似た症状が長く続きます。治療は、対症療法や細菌感染がある場合には抗生物質を使用して、回復を待ちます。
咳、息切れ、散歩を嫌がるなどの症状が見られたら、心臓病の疑いが
心臓のトラブル
心臓病になると、全身に血液を正常に送り出せなくなり、様々な症状が現れます。まず、乾いた咳や息切れ、疲れやすい、運動を嫌がるなどの症状が現れ、さらに進むと、肺水腫による呼吸困難や、腹水や胸水がたまるようにもなります。進行性の病気ですから、早期発見がたいへん重要です。
一般に心臓病の根治治療は困難なため、安静療法、食事療法、薬物療法を組み合わせて、症状の緩和や病気の進行を遅らせることが中心になります。また、肥満させない、過激な運動や興奮を避ける、極端な気温差に注意するなど、家庭での生活管理も欠かせません。
●僧帽弁逆流症(閉鎖不全症)
心臓の左心房と左心室にあって、血液の逆流を防ぐ重要な働きをしている僧帽弁が、しっかり閉じなくなることによって起こります。犬の心臓病の3分の2を占める、高齢期の小型犬によく見られる病気です。
●拡張型心筋症
犬に多いのは心筋症のなかでも「拡張型」と呼ばれるものです。心筋が薄く伸びてしまい、心臓の収縮力が低下して、血液の循環不全をきたす病気です。大型犬に多いのが特徴です。
●フィラリア症
蚊が媒介する犬糸状虫(フィラリア)が心臓や肺動脈に寄生することによって起こります。他の心臓病同様、咳、荒い息づかい、散歩を嫌がるなどの症状で気づくことが多く、進行すると、腹水や喀血、失神などを起こすこともあります。
治療には、手術で虫を取り出す方法、駆虫薬で虫を殺す方法、症状を抑えながら虫の寿命を待つ方法があり、症状の進み具合いと犬の健康状態に応じて選択されます。しかし、虫を除去できても、一度傷ついた血管や心臓が元通りに回復するわけではありませんので、フィラリア症は何よりも予防が大切です。
くしゃみ、鼻水、呼吸の異常は、鼻や気管に原因があるかもしれません
鼻・気管などのトラブル
●鼻炎・副鼻腔炎
鼻炎にかかると、鼻水やくしゃみ、時に目やにが出ることもあります。鼻水も最初はサラサラしていますが、重症化すると黄色や緑色のドロッとした膿のような鼻汁になります。慢性化すると、副鼻腔に膿がたまる副鼻腔炎になることも。
原因は、ウイルス、細菌、真菌(カビ)などによる感染、異物の吸い込みによる粘膜の炎症、花粉やほこりによるアレルギーのほか、上あごの歯周病の炎症が鼻にまで広がって、副鼻腔炎を引き起こすことがあります。
●気管虚脱
気管が押しつぶされたように扁平に変形し、呼吸がしにくくなっていく病気です。最初は空咳から始まり、次第に呼吸の際にガーガーとアヒルの鳴き声のような音を発するようになり、ひどくなれば呼吸困難を起こします。短頭種や気管の細いポメラニアンなどの小型犬に多く見られ、肥満や老化も発症の引き金になります。
治療は、咳止め薬や気管支拡張剤などによる対症療法が一般的で、肥満させない、首輪でのどを圧迫しないなどの日常的な配慮も大切です。症状がコントロールできない場合には、手術も検討されますが、難度の高いものになります。
●逆くしゃみ
逆くしゃみとは、グーグーと鼻水をすするような音ともに、強く空気を吸い込む動作です。短頭種に多い「軟口蓋過長症」(のどにあるヒダが垂れ下がって気道をふさぐ病気)によく見られる症状で、ひどくなれば手術が必要です。
一方、原因不明で、逆くしゃみを繰り返すケースもあります。発作は、通常、長くても数分で治まり、その間、犬は頭を前に伸ばし立ったままの状態で、意識を失ったりすることはありません。発作が治まればまったく正常に戻ります。こちらは、とくに治療の必要はなく、発作時に、のどや胸をさすってあげると早く治ります。