パグやフレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリアなどの、いわゆる”ペチャ鼻”系の短頭種の犬たちは、顔がにおうことがよくあります。においの発生源は、顔の”しわ”。短頭種は、しわの間に皮脂や汚れが溜まりやすく、放置すると細菌が繁殖して皮膚炎を起こしやすくなります。
通常、涙は鼻涙管という管を通って目から鼻へと排出されますが、短頭種はその管が曲がっていたり狭くなっていることが多く、涙がうまく流れずに目からあふれ、鼻のしわの間に溜まりやすくなります。しわの間が常に湿って、これがまた細菌感染を起こしやすい環境をつくってしまうのです。しわはないけれども、同じく短頭種のシー・ズーなどでも涙やけが多く、目の下の被毛が湿ってにおいやすくなります。
短頭種は、日ごろから、目の下やしわの間をこまめにふいて、清潔に保つこと。シャンプー時も、しわの間を忘れずに洗うとともに、しっかり乾かすようにしてください。
愛犬が吠えたり、あくびをしたりしたときに、口臭が気になることはありませんか?その原因の大半は、歯周病。人と同様、犬の歯周病も増えており、家庭犬の約8割が、程度の差こそあれ、歯周病もしくはその予備軍ともいわれています。
歯周病は、歯垢・歯石の蓄積によって起こります。歯に食べ物カスが付着し、そこに細菌が増殖して歯垢に。放置すると、歯垢が唾液中のカルシウムによって石灰化して歯石となり、歯茎が腫れて出血したり(歯肉炎)、進行すると、歯を支える歯根膜や歯槽骨までむしばまれるようになります(歯周炎)。また、歯周病は口内だけにとどまらず、歯周病菌が血管を通じて、心臓や肝臓、腎臓などに運ばれ、様々な内臓疾患の引き金にもなります。症状が軽ければ、麻酔下で歯石を除去する治療を行いますが、重い場合は、抜歯が必要になることにも。歯周病の予防には、子犬の頃から歯みがき習慣をつけることが大切です。
口臭には、口内のトラブルだけでなく、内臓疾患から来るものもあります。例えば、腎不全のときにも口臭が強くなることが知られ、その場合には、アンモニア臭がするのが特徴です。
犬が耳をかゆがり、耳内が赤くなっていたり、耳垢が出たり、独特の悪臭がするようなら、外耳炎が疑われます。垂れ耳や耳内に毛が密生している犬種は、耳がムレて外耳炎にかかりやすく、また再発を繰り返しやすいので、注意が必要です。
外耳炎は、耳ダニの寄生、細菌やマラセチアと呼ばれる真菌(カビ)感染、あるいはこれらの複合感染などによって起こります。治療は原因に応じて行われますので、動物病院での原因の特定が大切です。
通常、健康な犬なら、耳垢もにおいもほとんどありません。日頃から耳のチェックをし、異常に気づいたら、すぐに動物病院へ。綿棒で耳掃除をするなどの素人治療は、かえって症状を悪化させかねまいので危険です。
とくに長毛種の場合、飼い主さんが、愛犬の外傷に気づかないケースがあります。体のどこかから、かすかに化膿臭がするといった場合には、被毛をかき分けて傷の位置を確認してください。
犬どうしのケンカの後などは、とくに注意が必要です。咬み傷は、見た目は小さくても、深く傷ついていることがあります。また、犬の口は雑菌が多いうえ、体温が高くて菌が繁殖しやすく、化膿しやすいということもあるからです。大したケガではないと思っても、動物病院へ連れて行きましょう。
犬の肛門近く(肛門の左右、4時と8時の位置)には、一対の、肛門のうと呼ばれる強いにおいのする分泌物を出す袋があります。これは排便時に分泌することでテリトリーを主張したり、犬どうしがお尻をかぎ合って挨拶するときに、個体識別するためのものです。犬が興奮したときなどに、肛門のうが収縮して、分泌物が出てしまうことがあり、その悪臭に閉口した飼い主さんもいることでしょう。
この肛門のうが、細菌感染や、開口部(出口)が詰まって分泌物が溜まりすぎたりして、炎症を起こした状態が、肛門のう炎です。肛門のう炎になると、犬は不快感から、お尻をなめたり、お尻を床にこすりつけるなどの動作がみられ、悪化すると腫れて痛みが激しくなり、排便が困難になることもあります。発見が遅れると、肛門のうが化膿して破れ、溜まった血膿が出て、悲惨な事態にも。
大型犬の場合、分泌液は排便時に一緒に排出されることが多く、多量に溜まることは少ないのですが、小型犬や高齢犬では、自力でうまく排出できないことも多いようです。肛門のう炎の予防のためには、定期的な肛門のうを絞って分泌物を排出するようにしましょう。難しければ、動物病院やペットサロンでも絞ってもらえます。