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新入社員研修

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新入社員研修

『ベッツワンプレス2010夏号(Vol.23)』掲載分

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動物病院接客コンサルタントとなった今も一般企業の「新入社研修」は20年以上続けています。
この春も数社の研修に行ってきました。接客業だけではなく、土木・建築・機械等技術系の会社もあります。
実は動物病院の人材教育に欠かせない要素が新入社員研修の中には満載だなあと感じていますので、今回は、一般的な新入社員研修が、どのように実施されているのか、ご紹介させていただきます。

接客技術は社会人として必要なことのほんの一部
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以下は、かなり大雑把にまとめましたが、ビジネスマナー講師が担当する、一般的な新入社員研修のメニューです。その会社が単独で実施しするのはもちろん、「集合セミナー」と言って、複数の企業から新人だけが集合して行われる形式のものもあります。お互いに知らない会社の人達が集まるので「そんな会社もあるのか」と社会が相互に支え合っていることを再認識できます。もちろん、その後「業務の研修」は各社、各セクションで実施されており、規模によりますが、2カ月以上を完全な新人研修期間に充てる会社もあります。

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これまで私が動物病院研修で提供してきたものは、一般的なビジネスマナーである「来客応対」や「電話応対」を動物病院の受付業務に展開したものです。しかしそれらは、1~3のメニューにある、社会人として必要な要素の「ごく一部」でしかありません。不十分というにも及ばないほどのわずかな部分です。

カリキュラムとして、最初に取り掛かるべきなのはやはり、「社会人としての心構え」の部分だと思います。動物病院研修もここから順番にやってきたらよかったのですが、社会人向けに上記のメニューをこなすには20時間ほど必要です。時間的にあまり余裕のない動物病院では、「短時間で研修効果が出るもの」から取り掛かった方が、興味を持ってもらえるのではないかな…と思いました。その判断は、間違いではなかったようです。実際にこの10年で多くの動物病院が応対スキルの重要性を認知し、それを習得するために忙しい中、時間を割いてくださるようになりました。その結果、動物病院のベースの対技術はかなり、向上してきたし、これからも向上し続けると思います。

社会人としてのルール認識の必要性
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しかし、動物病院の方々と直接話し、情報を収集するほどに、皆さんの抱える「悩み」の多くは、「社会人としての心構え」と「仕事の進め方」の「共通理解」がないことに本質的な原因があるように思えてならないのです。誤解なさらないようにお願いしたいのですが、病院の方々の心構えを決して否定するものではありません。個々の理解が少しずつ違うということです。車は道路の左右どちらを走ってもいいと思います。しかし、たくさんの車がスムーズに通行し、渋滞や事故が起こらないようにするには、どちら側を通行するか決めなければなりませんね。自分が生活していた国ではこれまではずっと右側を走ってきたので、「右を走る方が自然」という感じ方はあったとしても、日本では左側を走らなくてはなりません。守らなければならないルールを「全員が」知らなければ、組織も社会全体もうまく機能しません。新入社員研修が外部講師により複数の企業でも同時に実施できるのは、共通のルールを伝える研修だからです。

組織では何を最優先させるべきかいうことが共通に認識できていないと、個々の価値観から「人間関係に波風を立てない」ことが優先され「報告しない」人がでてくることも少なくありません。「組織の人間関係」も「組織の社会的責任」も「社会人としての責任」も具体的にどういうことなのか、わかっていないと「仲良くする」ことと「組織人同士として協力する」ことの区別がつかなくなります。「動物病院は企業ではない」というご指摘もあるかもしれませんが、どんな組織であろうと社会と関わるのですから、コンプライアンス(社会的規範を遵守すること)を理解し、「組織人として責任を果たすとはどういうことなのか」の共通理解が必要なのです。報告が行われない組織のリーダーは、状況を正しく認識できず、妥当な判断もできないので、適正な指示もできなくなります。指示が不適当と感じる部下は、上司を信頼しなくなります。報告をしないことが組織にどれほどの影響を与えるのか、「全員が」知らなくてはならないのです。

組織人として本当に必要な力
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「社会人としての心構え」、「仕事の進め方」、「ビジネスマナー」はどれも欠かすことのできない3本柱です。ある状況設定をして、どのように行動するべきか判断するという研修があります。自分とは全く違う他の人の見方、価値観、受けとめ方があることを体験します。その体験を踏まえて、チームで一つの課題をこなすコミュニケーションゲームもあります。「いろいろあって当たり前」の体験を通して自分の意見を忌憚なく述べ、人の意見を注意深く聞くことができるようになるのです。複数のグループで行い、仕上がりは時間、コスト、運営面などから、総合的に評価されます。自分達のやり方を振り返り、他のチームのやり方と比較しながら多面的に分析するのです。このような体験は、おそらく新入社員研修が最初で最後と言う人がほとんどでしょう。時間の経過とともに記憶は薄れ、新入社員研修で何をしたかは具体的には忘れ去ってしまうものですが、その時に「感じたこと」は無意識の中に蓄積され、その人の社会生活で起こる出来事の受け止め方や、判断、処理の仕方に大きく影響すると思います。

新入社員研修は一般のオフィスワークを背景に作られています。「応対スキル」は飼い主の視点でできました。情報を10年分蓄積した今、「社会人としての心構え」も今後、できると思っています。しかし、獣医師でも看護師でもない私が「仕事の進め方」を動物病院バージョンにすることは非常に難しいです。概論的には説明ができても、落とし込めるほどインパクトのある事例展開ができないからです。今後、動物病院での勤務経験のある方の中から、この部分を構築してくださる方が出現することを切望しております。

著者紹介

坂上緑
坂上 緑(さかがみ みどり)
●大阪ペピイ動物看護専門学校 マナーとコミュニケーション講師
●動物病院に特化した接客セミナー、講演を全国展開
【出版物】
「飼い主さんとのコミュニケーション講座」
書籍、DVD(インターズー)
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