舌の「仕組み」について知ろう
猫は舌先だけをつけて水を飲む
舌は表面を粘膜で覆われていますが、内部は筋肉でできているのでかなり自在に動かせます。猫は水を飲むとき、舌先を「J」の形にして先だけを水につけ、高速で引き上げる動作をくり返します。対して犬は、舌を裏側に丸めて勢いよく水をすくい上げて飲みます。
味蕾(みらい)の数は人の10分の1以下で、犬よりさらに味音痴
舌の表面には、舌乳頭と呼ばれるザラザラした突起があり、味を感じる味蕾(味細胞の集まり)は、ここに集中しています。猫の味蕾の数は1000個以下とされ、人間の約1万個、犬の約2000個と比べても、かなりの味音痴と言えそうです。
味覚は「甘い」「酸っぱい」「塩辛い」「苦い」から構成されますが、猫の場合は「酸味」と「苦味」に敏感。肉食なので、腐った肉を食べることを避けるため、とくにアミノ酸の腐敗に伴う苦味に敏感になったと考えられます。また、「塩辛味」には鈍感。なお、「甘味」に対しては、近年の研究で、猫には遺伝子的に感知する受容体がないことがわかっています。猫にとっての食べ物のおいしさは、味よりにおいが重要なのです。
ザラザラの突起は猫科動物の特徴
猫の舌がザラザラしているのは、糸状乳頭と呼ばれる小さな突起がのどに向かって生えているからです。猫科の動物は、犬のような強いあごと歯をもたず、獲物の骨をかみ砕けないため、このザラザラの舌を使って骨に付いた肉をこそげ取って食べるのです。
また、待ち伏せ型の狩りをする猫は、捕食動物に気づかれないように自分のにおいを消すため、セルフグルーミングの習慣があります。ザラザラの舌は、毛づくろいのときに、汚れやにおいを舐め落とすブラシとしても活躍します。
毛を舐めて、体温を下げる
猫は人と違い、汗腺(エクリン腺)が肉球にしかなく、発汗による体温コントロールができません。そのため、毛を舐めることにより、唾液が蒸発する気化熱を利用して体温を下げています。
2010年のマサチューセッツ工科大の研究報告によれば、猫の舌は秒速76.2cmもの超高速で動き、1秒間に舐める動作を3~4回くり返しているそうです。
水面には舌先だけをつけ、引き上げるときに、重力と慣性のバランスにより水柱が立ち上がります。この水柱がいちばん高くなるタイミングで口を閉じることによって、効率よく、かつ、あごを濡らすことなく水が飲めるのだとか。
「舐める」しぐさで、気持ちがわかる
不安や緊張を和らげるカーミングシグナル
猫が不安や緊張する場面で、口まわりをペロペロ舐めたり、毛づくろいをする姿を見たことはありませんか?これは、猫が不安や恐怖を感じたときに、自分を落ち着かせるためや、相手に敵意がないことを知らせ、威嚇を和らげるために行うしぐさで、「カーミングシグナル」と呼ばれています。カーミングシグナルには様々な種類があり、猫がリラックスしようとして、のどをゴロゴロ鳴らすのもその一つ。
絆を深め合うために
一緒に暮らしている猫同士で、お互いに毛づくろいし合うこともよくあります。猫は、毛づくろいや体をすりつけて自分と相手のにおいを混ぜることにより、絆を深めているのです。猫が飼い主さんの顔や手をペロペロと舐めるのも、同じ理由から。飼い主さんを仲間と認める愛情表現といえるでしょう。
皮膚トラブルの可能性も
また、猫が体の一部をしつこく舐める場合は、皮膚にトラブルを抱えている可能性もあります。猫に比較的よく見られるのが「好酸球性肉芽腫症候群」と総称されるもの。
唇などに発生する「無痛性潰瘍」、首や腹部の皮膚に平坦な盛り上がりが見られる「好酸球性プラーク」、後ろ足の後面などに線状に盛り上がった腫れが見られる「線状肉芽腫」の3種類があります。原因ははっきりしませんが、アレルギーとの関連が疑われています。